レベル4解禁以降、商用ドローンの本格運用では機体側の適合性が強く問われます。
その中核が第二種機体認証です。
どの飛行に必要なのか、一等との違いは何か、要件や申請の進め方、費用感、機体選びのコツまでを専門的に整理しました。
現場で迷わないための実務知識を、最新情報ですと断ったうえで体系的に解説します。
許可承認や技能証明との関係もあわせて理解し、現実的なプランに落とし込みましょう。
本記事は制度の公式文書や運用通達の考え方を踏まえて、技術者と運航者の双方に役立つ観点でまとめています。
専門用語は丁寧に噛み砕き、すぐ使えるチェックポイントと手順を示します。
読み進めれば、自分のミッションに第二種が本当に必要か、今の機体で何を追加すべきか、次の一手が明確になります。
目次
ドローン 第二種機体認証とは 何かと制度の全体像
第二種機体認証は、無人航空機が定められた安全基準を満たすことを個体単位で確認し、認証書を付与する制度です。
量産設計そのものを証明する型式認証と、実際に運用する現物を確認する機体認証があり、第二種は高リスクの一等に比べ要件が簡素化されています。
制度の目的は、運用面だけではコントロールしきれない機体固有の故障リスクを、設計と製造品質で抑え込むことにあります。
第二種は、立入管理ができる範囲での夜間や目視外、補助者最小化などの高度な飛行で活用されます。
必須となる場面と、任意だがメリットが大きい場面があり、運用設計と合わせて評価するのが実務のコツです。
機体認証制度の枠組み
制度は大きく設計の適合性と製造の適合性、そして個体の適合性確認で構成されます。
量産機は型式認証で設計基準適合を示し、各機体が機体認証を受けます。
一方で試作やカスタム機は、型式を飛ばして個体で全要件を確認するルートも選択できます。
いずれのルートでも、要求事項は構造強度、推進系、操縦制御、電源、識別、フェールセーフ、ソフトウェア、製造品質にまたがります。
認証書は個体識別と紐付けられ、改造や主要構成品の変更時は適合性を再確認します。
第二種の位置付けと役割
第二種は、第三者上空を常時含むような最も厳しい環境を想定する一等に対し、リスクが相対的に低い環境での高度運用を前提に設計された枠組みです。
求められる冗長化や故障確率の目標は一等より緩和されますが、フェールセーフや識別は確実に求められます。
制度導入の効果は、審査の標準化と、運用許可の迅速化にあります。
認証済み機体であれば、許可申請時の添付資料や安全性証明の負担が大きく軽減されます。
型式認証と機体認証の違い
型式認証は設計そのものの適合性評価で、量産や複数個体の運用に向きます。
ソフトウェアの開発プロセスや安全解析、強度計算、試験結果など包括的な審査が行われます。
機体認証は個体の完成度評価で、製造管理と検査結果が中心です。
型式がある場合は簡略化され、ない場合は個体で設計適合まで説明するため、試験や文書が増えます。
対象となる飛行と不要なケースの見極め
第二種が必要になるかは、飛行カテゴリー、リスク低減手段、立入管理の方法で決まります。
必須のケースと、任意だが強く推奨されるケースを切り分け、過剰品質や過小対策を避けましょう。
必要となる代表的な運用シナリオ
立入管理区域内での目視外飛行や夜間飛行、補助者を極力減らした少人数運用などは、第二種機体認証が有力です。
自律経路飛行や長距離点検で信頼性が求められるケースも該当しやすいです。
イベント前日の夜間点検、インフラ沿いの目視外点検、広域農地の効率散布など、第三者を排除した管理区域での高度運用は典型例です。
認証を持つことで許可承認の審査がスムーズになり、運用計画の自由度が上がります。
不要となる運用の例
人の立ち入りが無い広場での目視内の日中飛行など、リスクが低く許可不要の範囲では、第二種は原則不要です。
教育やホビー用途で簡易飛行を反復するだけなら、登録と遵守事項で十分なことが多いです。
ただし同じ場所でも、目視外や夜間、人口密度が上がる時間帯を選ぶ場合は状況が変わります。
ミッション内容と環境の変化で必要性は容易に逆転します。
技能証明や許可承認との関係
機体認証は機体側の要件、技能証明は操縦者の資格、許可承認は運用の審査です。
それぞれが独立しつつ相互補完する関係にあります。
第二種機体認証があると、運用許可の一部添付が簡略化され、運用条件の設定も合理化されます。
操縦者が適切な技能証明を有し、運用マニュアルが整っていることが前提です。
一等機体認証との違いを比較
一等と二等の差は、想定する第三者リスク、要求される冗長化と故障率、許容されるフェールセーフの姿に現れます。
誤解を避けるため、要点を比較で押さえましょう。
許容されるリスクと運航環境
一等は第三者上空を含む環境や、容易に退避できない環境を強く想定します。
二等は立入管理の徹底を前提に、リスクを管理可能な範囲に抑えた運航を想定します。
要求される安全装備
一等では高い冗長化、飛行継続と制御喪失時の安全着地の両立がほぼ必須です。
二等は適切なフェールセーフと降下手段、位置情報の保全、通信の健全性監視が中心となります。
申請の重さと運用自由度
一等は設計から製造、運用まで詳細な審査が行われ、自由度は高いが準備負担が大きいです。
二等は実務に必要な安全水準を確保しつつ、準備の現実性を両立させます。
| 観点 | 一等機体認証 | 第二種機体認証 |
|---|---|---|
| 想定環境 | 第三者上空を含む高リスク | 立入管理下の中リスク |
| 冗長化 | 主要系統で高レベル冗長 | 重要系統で適切な冗長またはフェールセーフ |
| 許可承認の簡略化 | 大きい | 大きい |
| 準備負担 | 非常に大 | 中 |
取得要件と技術基準のポイント
要求は網羅的ですが、実務でボトルネックになりやすい箇所は限られます。
合格率を左右する要点に絞って解説します。
基本安全要求
設計強度、推進系の信頼性、プロペラやローターの飛散防止、失速や制御喪失時の安全な停止または降下が核です。
最大離陸重量、重心、飛行包絡線の妥当性が整理されている必要があります。
フェールセーフは、通信断、GNSS喪失、電圧低下、姿勢異常など代表故障に対して、帰還、ホバリング、計画降下などの挙動を定義し、試験で実証します。
ログで根拠を示せる構成が望ましいです。
通信とリモートID
操縦通信はリンクの冗長化または健全性監視、占有帯域の考慮、外乱時の復帰を含めて評価します。
リモートIDは常時有効、識別番号と登録情報が一致し、外部からの改ざん耐性を持つことが前提です。
ジオフェンスや高度制限は、運用者の設定ミスに備えた上限保護が求められます。
外部指令との干渉や電波法との適合性も確認します。
ソフトウェアとサイバーセキュリティ
飛行制御ソフトは変更管理、版数管理、テスト証跡を整備します。
遠隔アップデート時の検証手順、署名や改ざん検知、ロールバック手段を明確化します。
通信経路の暗号化、認証、ログ保全は必須です。
異常検知とフェールセーフの統合挙動を、シミュレーションと実機で相互に裏付けると審査が安定します。
バッテリーと電源
セル不均衡、過電流、過放電、熱暴走対策をBMSで担保します。
主要センサーや制御系への電源は冗長供給やフェールセーフ降下を前提に設計します。
コネクタのロック機構、逆接続防止、振動環境での配線固定は重点確認ポイントです。
耐環境試験の結果を整然と提示しましょう。
製造品質と個体識別
製造記録、トレーサビリティ、個体識別の刻印またはラベル、検査成績書の保存が求められます。
シリアル番号の管理と、認証書の番号との整合は必須です。
量産機は出荷検査の範囲、カスタム機は完成検査の試験項目と合否基準が鍵になります。
外観、締結トルク、重量実測などを抜けなく管理します。
申請手順とスケジュールの実務
ルートの選択で準備内容も期間も変わります。
全体の見取り図を描いてから着手すると手戻りが激減します。
ルート選択 型式ありか個別か
型式認証済みの量産機を使うと、個体の機体認証は短期間で終えられます。
カスタムや独自設計は、個体で設計適合まで説明する個別ルートを選びます。
ミッションが長期継続で台数拡大見込みなら型式ルート、単発や小ロットなら個別ルートが現実的です。
早期立ち上げには既認証機の採用が王道です。
必要書類一覧
代表的には以下を準備します。
運用概要、機体仕様、構成品表、図面、ソフトウェア構成、フェールセーフ仕様、試験計画と結果、製造品質手順、整備要領、識別とラベル、リモートID適合、重量実測、写真、適合性マトリクスなどです。
- 安全性設計書と故障モード分析
- 飛行試験結果とログ
- 電波法適合の確認資料
- 整備記録様式と運用マニュアル
試験と検査の流れ
地上試験で機能と安全装備を確認し、飛行試験で代表故障時の挙動を実証します。
登録検査機関等の立会いで要点を再現できるよう、事前にリハーサルしておくと安定します。
検査は書面審査、工場または製作場所の確認、個体検査の順で進むのが一般的です。
指摘事項への応答は、原因、是正、再発防止の三点セットで整理しましょう。
スケジュール構築のコツ
文書整備と試験場確保、部材リードタイムがクリティカルパスです。
早期に試験計画を固め、並行して文書作成を進めると全体が短縮します。
型式ありで1〜3か月、個別ルートで3〜6か月が目安ですが、仕様変更が入ると延びます。
初回は余裕を見込み、マイルストーンを細かく刻みましょう。
費用の目安と予算計画
費用はルート、試験の規模、外部委託の範囲で大きく変動します。
典型的な内訳と抑えどころを把握しましょう。
初期費用の内訳
試験費、検査手数料、文書作成の工数、治具や安全設備、保険の追加費用が主な構成です。
量産機の機体認証のみなら数十万円規模、個別ルートや新規設計では数百万円以上になることがあります。
外部の安全解析や試験立会いを活用すると品質は安定しますが、費用は増えます。
社内に型を残す投資と割り切る判断も有効です。
維持費と更新費
定期点検、消耗品、バッテリー更新、記録管理、認証表示の維持が継続費用です。
主要構成品を変更した場合の追加検証費用も見込んでおきます。
コストを抑える工夫
既認証の量産機を採用し、運用要件で目的を満たすことが最も効率的です。
ソフトの更新は計画的にまとめ、試験をバッチ化して回数を減らします。
試験は代表ケースの抽出とログの再現性が鍵です。
再実施を減らせば費用も期間も抑えられます。
対象機の選び方と量産機・カスタム機の戦略
機体選定は、ミッション要求と認証の取りやすさのバランスが重要です。
量産機とカスタム機の使い分けを戦略的に検討しましょう。
量産機を選ぶメリット
型式認証や実績のある量産機は、文書と試験が整備され、機体認証も短期で通る傾向があります。
保守部品とサポート網も整っており、運用の信頼性が高いです。
複数拠点での同時運用や、要員の教育標準化にも向きます。
ライフサイクルコストを抑えやすい点も利点です。
カスタム機での注意
特殊センサーや投下装置など、独自装備が必要な場合はカスタムが有効です。
一方で設計説明と試験の負荷が増えるため、スケジュールと予算に余裕を持たせます。
改造により重量や飛行特性が変わると、フェールセーフの再評価が必要になります。
早い段階で安全解析を行い、要求を満たす構成を固めましょう。
重量区分とミッション適合
離陸重量、航続時間、耐風性能、冗長化の有無を、ミッションの要求水準に合わせます。
過剰なスペックは費用と審査負担を増やします。
ペイロードの電磁ノイズや電源要求は、制御系への干渉が無いか検証が必要です。
配線と固定方法まで含めた設計が審査を安定させます。
維持管理と改造時のルール
認証は取得して終わりではなく、維持管理が品質を左右します。
変更管理の仕組みまで含めて整えておきましょう。
定期点検と記録
飛行前点検、飛行後点検、定期整備を区分し、点検記録を保存します。
プロペラ、モーター、コネクタ、アンテナ、BMSログなどは重点部位です。
異常が無いことの記録も重要です。
後日の追跡性を確保し、審査や事故対応で強い証拠となります。
変更管理と認証の有効性
ソフト更新、プロペラ変更、バッテリー容量変更、ペイロード追加などは、有効性への影響を評価します。
主要変更は再試験または当局と登録検査機関等への相談が無難です。
認証ラベルの表示、個体識別、リモートIDの設定は常時整合させます。
表示不備は軽微でも指摘対象になり得ます。
事故報告と是正措置
重大インシデント時は運航停止、原因究明、是正の三段で進めます。
機体側要因が疑われる場合は、再発防止策を設計と整備の両面で打ちます。
ログのバックアップ、バッテリー隔離、現場保全は初動対応の基本です。
対外報告は事実関係を時系列で整理します。
よくある失敗とチェックリスト
不合格や差し戻しの多くは、技術の不足ではなく段取りと文書の粗さに起因します。
よくある失敗を把握して先回りしましょう。
運用での落とし穴
リモートIDの未作動、ジオフェンス未設定、フェールセーフ閾値の誤設定は典型です。
現場チェックリストで二重確認を仕組み化します。
補助者配置や立入管理の甘さも見落としがちです。
運用計画書と安全要員配置図で可視化しましょう。
技術文書での不備
フェールセーフの仕様が記述と実挙動で不整合、試験ログの時刻とイベントの不一致、図面と実機の相違などが頻出です。
版数管理と最終版の一本化が効果的です。
重量実測の基準が曖昧、写真が不鮮明、識別ラベルの位置が図示されていない、といった形式面も差し戻し要因です。
テンプレート化して品質を平準化しましょう。
事前準備チェックリスト
- 適合性マトリクスに全要求をトレース
- 代表故障の試験と動画、ログをセットで準備
- ソフト版数、機体シリアル、リモートIDを整合
- 点検要領と運用マニュアルを最新版に統一
- 表示ラベルの耐久性と位置を写真で証跡化
第二種は運用でリスクを抑える前提の認証です。
立入管理や手順の堅牢さと、機体側のフェールセーフが両輪になります。
どちらか一方が弱いと審査は通りにくくなります。
FAQ
現場から多い質問を簡潔に整理します。
判断に迷ったら個別要件と運用実態を突き合わせて検討します。
海外機体でも第二種は取れるのか
設計資料、試験データ、製造管理の提示が可能であれば取得は可能です。
ただし非公開部分が多いと審査が難航しやすく、量産機の国内サポート体制が鍵になります。
ファームウェア更新の影響は
飛行制御や安全機能に関わる更新は、再試験や影響評価が必要になることがあります。
運用開始後は更新を計画化し、検証と記録を徹底します。
複数パイロットで運用してよいか
機体認証自体は操縦者に依存しませんが、運用許可とマニュアル、技能証明の組み合わせが必要です。
教育記録とブリーフィング手順を標準化し、運用の均質性を担保します。
まとめ
第二種機体認証は、現場で実現可能な安全と柔軟な運用を両立させるための制度です。
どの飛行で必要かを見極め、量産機かカスタムかの戦略を定め、設計と運用の証跡を整えることが成功の近道です。
要点は三つです。
一つ目は、リスクに応じた要求の読み解きとフェールセーフの実証です。
二つ目は、文書とログの整合を保つ情報管理です。
三つ目は、維持管理と変更管理を運用に組み込むことです。
この三点が揃えば、審査も運用も安定します。
機体認証はゴールではなく、継続改善の起点です。
認証を活用して許可承認を効率化し、現場での安全と生産性を高い次元で両立させましょう。
最新情報ですの観点を取り込みつつ、あなたのミッションに最適な選択を積み重ねてください。
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